新潟県村上市出身の新鋭画家・板垣匠インタビュー。個展「祈りを描く 板垣匠展」

新潟県村上市出身の板垣匠さん。故郷をテーマにした作品などを手がけ、県内外から注目を集めている26歳の新鋭画家だ。現在「祈りを描く 板垣匠展」が新潟市中央区のNSG美術館で開催中。自身初となるロングインタビューを通して、今回のみどころや創作への想いを聞いた。

板垣さんの作品は、故郷の村上をテーマにしたものが多いと伺いました。特にどのようなモチーフを描かれますか？

だいたい人や自然がモチーフになっています。特に村上を題材にした作品が多いのは、村上市出身というルーツを大切にしたかったから。テーマも案外つきなくて、結構湧いてくるんですよ。そういうところにも魅力を感じています。

今回の展覧会にはどのような作品が展示されていますか？

「祈りを描く」という副題に沿って、見た人の深層心理に共感するような作品を選びました。旧作も何点かありますけど、今回のために描いた絵も結構ありますね。

こちらの「崇岩（すうがん）」もその一つです。祖母の家が笹川流れのほうなのでよく行くんですけど、海岸沿いは奇岩が多いんです。僕そういうのに惹かれるんですが、ここまで大きく描いたのは初めて。岩のダイナミックさを出したかったので大きい絵でやりたいなと思って。絵の具も自分で作りました。チューブのアクリル絵の具は、そのままだとどうしても軽い印象になるので、粉々にした土なんかをアクリル樹脂と合わせて絵皿で溶きます。人工物は色が劣化するんですが、自然のものは耐候性があるんですよ。

個展の副題が決まってから何日か写真を撮りに行って、それを元に描きました。この日は天気が良くて日差しが強かったので、岩の影がくっきり黒く出ていて。岩の感じが遠くからでもわかる様子を再現したかったんです。海の色もすごく綺麗でした。影って天気がいいと青がたまるんですよ。だから青の顔料をドバッと乗せました。
穏やかで優しい反射と岩のダイナミックさのコントラストを楽しんでもらいたいですね。

作品はどのように生まれるのですか？

普段生きていく中で何かがワインの折みたいに溜まってくるんです。それがある日ふとした光景で結びつく。全く関係ないようなこと同士でもイメージが重なって、ちょっとしたビジョンが浮かぶんです。そうやってだんだん出来上がっていきます。

キャンバスにも特徴があるそうですね。

目の粗い麻布を木に貼って、その上に石膏と砂とアクリル樹脂を混ぜた下地を左官屋さんみたいにコテで塗って作っています。壁画の様なニュアンスが好きで、日本の漆喰やヨーロッパの壁画などの作り方を参考にしました。

変わった形の作品もありますね。

板を切るパターンもあります。だから最初に構図がある程度完成してないといけない。後から切るっていうのができないので、形を決めてキャンバスを完成させてから色を塗っています。

「瀧図（たきず）」は木の形をそのまま活かしています。祖父が大工の棟梁だったので家に廃材がいっぱいあって、イメージするものとちょうど形が重なったので使いました。

みどころを教えてください。

メインの「千五百秋（ちいおあき）（中央）」、「瞑（左）」、「想（右）」ですね。これらは別々の作品なんですが、中世の祭壇画のようなニュアンスを出したかったので、真ん中の絵に合わせてシンメトリーにセットしました。

「ちいおあき」は、悠久に近い言葉ですごく長い時間のような意味。1枚の絵の中に時間の違う場所と人物を置くことで循環している様子を表しています。また自然や人間の営みに祝福と祈りを捧げている絵を描きたかったので、おめでたい色とされている赤、緑、白の3色をイメージカラーにしました。

見方がわかると面白いですね。

作者の意図がわかると腑に落ちますよね。でも僕は自由に観て欲しいので、絵には解説をつけていません。在廊している時もあるので、もしわからないことがあったら気軽に聞いてください（笑）。

2階のメイン会場の他に、1階には「水と土の芸術祭」に合わせた旧作を展示したり、

画廊で並べていた作品を販売しているので、よかったら観て行ってください。

独特な視点と圧倒的な表現力で観るものを魅了する板垣匠さん。大迫力の作品をぜひ会場で。

【板垣匠 略歴】
1994年（平成6）村上市生まれ。
2016年日本アニメ・マンガ専門学校卒業。
2015～2019年個展（羊画廊）。
他、新潟、東京で個展、グループ展等。

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INFORMATION

祈りを描く 板垣匠展
会期 : 2020年6月27日（土）～8月16日（日）
開館時間 : 10:30～18:00（最終入館は17:30まで）
会場 : NSG美術館
観覧料 : 一般300円、学生200円、高校生以下無料
休館日 : 月曜日（祝日または振替休日が月曜日の場合はその翌日）

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