新潟駅南口広場のバスロータリーに、3月の上旬から僅か2週間で、37×3mの巨大なミューラルを描いたDragon76氏にこれまでの活動や今回のプロジェクトについて聞いてみた。

アーティスト/Dragon76 Interview


左 : Dragon76 右 : KSK ONE

KSK :
アートを仕事にするという事はなかなか大変かと思いますが、どういった経緯で仕事になっていったのでしょうか?

Dragon76 :
生まれは滋賀の田舎やったんですけど皆んな高校卒業すると大阪や京都に行く人が多くて、小ちゃい頃から絵を描くのが好だったってのもあって、大阪にあるアートの専門学校へ行きました。そこで出会った仲間とスプレーだったりライブペインティングをやっていて、やりだすと毎回作品を向上していきたいという思いが強くなって。それを続けていたら徐々に仕事が来るようになっていったって感じですね。

KSK :
学生の頃から依頼とかあったんですか?

Dragon76 :
友達のクラブイベントのフライヤーとか、クラブに頼まれてスプレーで描いたりとか。それが初めての仕事ですね。

KSK :
Dragonさんの作品というと人間本来の表情だったり、動物でも生命力を感じたり、体温が感じられる作品が多いですが、テーマやスタイルについてお聞かせください。

Dragon76 :
自分の中で伝えたいことがあって、それを表現する手段としてのスタイルやったんで、まずこういうスタイルをやろうというよりは、流れの中で出来ていった感じですね。
この絵はこういうテーマでとか細かいのはあったりするんですけど、人種や精神的なマイノリティーに対して一歩踏み出すきっかけになるようなアツい絵を描きたいと思ってます。

LIBERTY AND JUSTICE FOR ALL / オリジナル作品 / 2003


KSK :
個人的に印象的な絵の中にチェ・ゲバラを描いたモノもありますが、ああいった反骨的なテーマでもトゲトゲしくない、ポジティブな気持ちになれるという印象があります。また、近年はスタイルと共に描くテーマも変化が見られますが、変わるきっかけなどはあったのでしょうか?

Dragon76 :
若い頃はそういったPEACEに繋がる絵を描きたいと思ってたんすけど、最近は色々スタイルが変わってきて。ずっと描いてると、綺麗なモノだけじゃなく、PEACEの裏にはWARがあり、喜びがあれば悲しみもあるし、そういった対極にあるモノをひとつの絵で表したくなって、そういった事の「共存」を描いてますね。最近はよく近未来のレジスタンスをイメージして立ち向かう戦士を描くんすけど、近未来のモチーフを描きながらも手に持つ武器はアナログというか手作りの武器みたいな。手作りの武器ってのは「自分が持っている武器(技や表現)」自分であれば絵であったり。そのメタファーとして武器を描いていて。それを用いて大きな体制に立ち向かうみたいな、精神的なマイノリティーのパワーを表現しています。

innovative / オリジナル作品 / 2013

POW!WOW!天王洲での作品


KSK :
Dragonさんといえば、ライブペインティングが下書き無しだったり、異常な速さで描かれるその過程が見ていて衝撃的だったのですが、ライブペインティングの時に大切にしている事はありますか?

Dragon76 :
家でずっと作品を制作しているとホンマに入り込んで描くんですけど、人前でパフォーマンスとして表現したいと思ったので始めました。ライブペインティングで一番大切だと思うのは、良い作品を綺麗に描くのではなく、パフォーマンスとして描き姿がええ感じやったりとか、ホンマに力を発散するようなバイブスみたいのが大事やと思ってます。

KSK :
ライターには描く絵をあらかじめ決めて描く人と、何も無いところから即興で描く人がいますが、Dragonsさんはどちらのタイプですか?

Dragon76 :
僕は両方ですね。考えていた新しいスタイルを試す場所として決めている場合もあるんですけど、即興でその場で立った時に出てきたモノを描くこともあります。でも失敗したと思った線が後になって気に入ったりとか。即興はホンマに想像超えて200点になる事もあって。0点もあるけど(笑)。それをイイトコ取りして次の制作に繋げていってます。

LIVE PAINT / 2013 / MITO,IBARAGI


KSK :
なるほど。そうやって次のスタイルができていくんですね。では、これまで描いてきた中で印象的な出来事はありますか?

Dragon76 :
POW! WOW!っていうHAWAII発祥のミューラルのアートフェスがあって、2015年に日本の天王洲であったんすけど、その時に始めて参加させてもらって、国内外の有名なアーティストが同じ期間、同じ地域でミューラルを制作するんすけどホンマに刺激が多くて。横ですごいの作ってたり、描き方も全然違うし。すごい勉強になりましたね。その後台湾とロングビーチも呼んでもらって。

KSK :
日本と海外で反応に違いはありましたか?

Dragon76 :
海外は他が汚れないようにする養生をしない(笑)。描いてる時も通行人が御構い無しにコンセプトとか聞いてきて(笑)。あと警察に注意されると思ったら「インスタアップするから一緒に写真撮ってくれ。IDも教えて」とか(笑)。

KSK :
(爆笑)。なるほど!分かりやすい(笑)。

Dragon76 :
逆に日本はアーティストに崇高なイメージがあるのか少し距離を感じます。ちょっと離れたところで見ているみたいな。全然聞いてもらっていんすけどね。

POW! WOW!LONG BEACHでの作品


KSK :
昨年はN.Y.に拠点を移しましたが、どういった経緯でしょうか?

Dragon76 :
20代前半から漠然とN.Y.に行きたいというのがあったんやけど、7年ほど前に日本での活動環境も良くなったので、関東に家を建てて。この先の人生ここを拠点として海外に呼ばれたら行くみたいな感じで頑張っていこうってなって。でも、いざここから動かれへんと思ったら、もっとチャレンジしたいし、人生一回きりやしという思いが膨らんで、、、。で、ある日嫁に話したらお互い同じ事思っていたみたいで。あと子供は前から嫌がってたからしょうがないなと思ってたんです。でもその頃ちょうどアメリカのコメディーやったりドラマを観て「アメリカ生活も楽しそうやな」みたいのをチョロっと言ってたので、「もう動こう!」ってなって。で、家も売ってアーティストビザ取得して、行きました。

KSK :
子供の決定権すげー(笑)。実際行ってみてどうですか?

Dragon76 :
まだ行って4ヶ月ちょっとで。しかも最初の1ヶ月は家探しとピースボートやマイアミのアートバーゼルやベトナムにも呼んでもらって、実質2ヶ月ちょっとでN.Y.はこうって言えないんですが、、、。

KSK :
え-!?でもHell Gate BridgeがNY Timesに取り上げられたり、いろんなプロジェクトに参加してたので、かなり活動してるように見えましたが?

Dragon76 :
ずっと運がいいというか、、、。N.Y.はホンマ色んな所で色んな人がチャンスを探しているから、動けば動くほど知り合いもチャンスも増えるし。とにかく動かないと。N.Y.は人の繋がりが一番重要やってのは言われてます。運良くそういう人と知り合って、ホンマめまぐるしいですね(笑)。

KSK :
長年、世界各地で開催されているアートバトルのN.Y.大会で優勝しましたが、印象や反応はどうでしたか?

Dragon76 :
情報見つけたんで、とにかく何かきっかけ掴もうと思って。絵には自信あったんすけど、でもお客さんの投票だけで決める審査やったんで、N.Y.行ったばかりで友達も一人しか呼べなかったからどうなんやろなと思ってたんです。でも自分で言うのもなんですけど、決勝は自分の投票BOXだけ入りきらずに溢れてて数えるまでもなく「優勝した!」と思って。

KSK :
流石ですねー!あれを20分で描くのは凄すぎます!頭ん中どうなって描いてるのかって(笑)。
最近ではN.Y.でPNBの25周年パーティーにも行ってましたね。実は自分、こんなのを持っていて。

Dragon76 :
うわー!PNB(90’sのHIP HOP WEARのブランド)のポスターや!うわ懐かしい。

KSK :
自分これでDragonさんを知ったんですよ。最初は本国アメリカの人が描いたんだと思ったら、日本人だと教えてもらって衝撃的でした。

Dragon76 :
ありがとうございます。今回日本に帰って来る直前に出会って。昔PNBからも仕事もらってたので、その日はみんなと久しぶりに色々話せました。

KSK :
PNBはまた服を出すんですかね?

Dragon76 :
がっちりブランドとして出して行くかはわからないんですけどたまにイベントやったりとか記念のTシャツ出したりとかはしてるみたいで。好きなんで期待してるんですけどね。

KSK :
そうですよね!90’sのストリートブランドとしてはデザインもカッコ良かったし、復活して欲しいですね。
それと、今回スポーツチャンネルやスポーツゲームでおなじみの、ESPNによるWBCの各国アートワークに日本代表として抜擢されましたね。ビジュアルに関してどういった思いで描いたのでしょう?

Dragon76 :
N.Y.いった直後ぐらいに決まったんですけど、全部英語のやり取りやったんで全然わからへんくて翻訳機使って何回もやり取りして(笑)。で、日本代表・日本を象徴するイメージやったら何でもいいんでって事やったんで、じゃあ侍ジャパンやし最近はよく侍をモチーフに作品を作っているので、ラフを描いて送ったら「超COOL」って返ってきたんで「これでいいんや!」って感じで。

ESPN WBCのポスターをチェック

KSK :
いやー、あれは各国の絵の中で群抜いてかっこいいです。
さて、ようやく新潟のアートプロジェクト、A Touch of Art in Niigataの話に行きたいのですが、今回の依頼を受けてどうでしたか?

Dragon76 :
今回、A Touch of Art in Niigataの大西君との間に入ってくれたGROUNDRIDDIMのユーヤくんから大きさを聞いて37×3mと聞いて「ヤバイな」と(笑)。今までやった一番でかいのがPOW! WOW!の15×3.5mやったんすけど、あれで5~6日かかって。その倍以上の大きさで2週間でどんだけ描けるか読みきられへんかって。でも、「大丈夫。現地でアシスタントいっぱいつけるんで」って言ってもらえたんで、じゃあもうガッツリやりたい事全部入れてやろうと。実際ホンマみんな手伝ってくれて、かなり助かりました。

KSK :
僕も下絵を見せてもらいましたがブチ上がりましたね。昔から大好きなアーティストのミューラルが、自分が住む街に描かれる。しかも自分の街が描かれているっていう!
今回の絵について聞かせていただけますか?

Dragon76 :
日本海の夕日とそこに根付く人々を表現したくてあの構図にしたんですけど、夕日を見上げてまた明日も楽しみやなぁと思う人と、新潟の象徴的なものを入れてそれに囲まれて生きるといった感じで。実は真ん中のマークも新潟のエンブレムを自分なりの表現で描かせていただきました。この絵を見て何かを感じたり、自分が住む街を誇りに思ってもらえるようになったらいいなと思ってます。


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KSK :
新潟に実際来てみてどんな印象を受けましたか?

Dragon76 :
やっぱり人ですね。みなさん人がいいんで。地元で愛される有名人にも会わせてもらったり、すっごい好きッス。あと描いていて思ったのはみなさんシャイなのかなぁと。でも去り際に小声で「かっこいい…」みたいな感じで一言添えてくれるんで有難いです。
食べ物も美味しいし。着いてすぐに日本酒飲んで、まあまあ時差ボケやったんけどベロッベロに酔っ払って(笑)。僕、日本酒ってね、ホンマ数えるほどしか飲んだ事なかったやけど「マジで日本酒うまっ!」って思いました。特に越乃寒梅メッチャうまいと思いましたね(笑)。タレカツ丼ももう2回食いました(笑)。

KSK :
それは市民としても嬉しいですね。
新潟市ではA Touch of Art in Niigataという、街でアートに誰でも触れることができる場所を作るプロジェクトが進んで、徐々にこういったミューラルが増えているのですが、そういった活動についてはどう思いますか?

Dragon76 :
それはホンマにどんどんやっていって欲しいし、新潟市の動きがきっかけで全国に広がったらいいと思いますね。そうすれば海外からも色んなアーティストが来てくれてもっとシーンが盛り上がると思ってます。
特に自分の今回の絵はホンマにその土地の良さを再確認して誇りに思ってもらえるようにと願って描いているので、見た事によって想像してもらったり、考えるきっかけになってもらえたらいいなと思ってます。

KSK :
今回のミューラルを描く様子を東京のGROUNDRIDDIMと新潟のSOLU MEDIAGEが組んで、映像も製作中でだそうで。そういった繋がりや広がりを見せるのもこのプロジェクトの魅力ですね。
さて、新潟市のミューラルが完成した後にはJAPAN TOURがありますね。これからの目標ややりたい事はありますか?

Dragon76 :
新潟の絵を描いたあとJAPAN TOURでライブペインティングをするので、そのパフォーマンスをぜひ見に来て欲しいです。これからの目標としては、まず作品をしっかりと時間をかけて作って自分から仕掛けられる武器を持ちたいです。あとTシャツを作ったりとか。

KSK :
俺もTシャツ持ってました!TOUCH YOUR SOULとManic Deeのコラボのやつ。また欲しいですねー!

Dragon76 :
今まさに某格闘技ブランドのアパレルのための絵をホテルで描いてて。

KSK :
へー!楽しみですね!最後にアートを仕事にする事を目指している人たちにメッセージをお願いします。

Dragon76 :
自分もまだまだなんやけど、何にしても重要なのはまずは動く事ですね。家でずっと描いていても誰かに見せへんかったら何も起こらへんし、人と繋がらな成っていかへんから。もちろん自分の絵を磨くのは第一条件やし、ポートフォリオ持っとくのも重要やと思うし。自分も人の懐に入るのは苦手でホンマ心折れそうなる時もあるけど。日本にいた頃、評価されてからは向こうから聞いてくれるようになった。けど、N.Y.は何の繋がりもなく行ったので、こっちを向いてない人にどう向いてもらうかを考えて、きっかけになりそうなものは何でもやろうと思ってます。運もあると思うけど、それも動かへんかったら何もならへんから。だから描いて動くことを続ければ、次に繋がっていくと思います。

TEXT : KSK ONE

PROFILE

Dragon76

1976年滋賀県生まれ。
ストリートアートを基本とし情熱的で生命力溢れるタッチで、国内外の企業広告やアパレルブランドとのコラボレーション、音楽関連のビジュアルや壁画など幅広く手掛ける。また、即興で繰り広げられるダイナミックなライブペインティングは世界中からのオファーも絶えず多くの観客を魅了する。2011年にはUKのフットボールクラブ、Liverpool FCとメインスポンサーであるCarlsbergが共同制作したCMにメインアーティストとして出演している他、同年、南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラの娘、ジンジ・マンデラの50歳のバースデーパーティーにアーティストとして招待されライブペインティングショーを披露する。

: http://www.dragon76.net
: https://www.instagram.com/dragon76art/

Author Profile

KSK ONE
KSK ONE
CUT INのグラフィックデザイナー。HIP HOPにハマり、GRAFFITIやDANCEをかじって、クラブにもどっぷり浸かる。最近はシティ・ポップスの音源&ライブもチェック。ネギヲタ箱推し。